難病とお金

※資料の誤読、現状認識の誤りなどありましたら、ぜひご指摘ください。


今日、厚生労働省は難病患者への医療助成制度見直しについて、第33回難病対策委員会に下案を提出しました。その内容が、難病患者の間で大きな衝撃をもって受け止められています。

難病対策:医療費助成「自己負担2割に」 厚労省が引き下げ案- 毎日jp(毎日新聞)

会議の資料はこちら→疾病対策部会難病対策委員会審議会資料 |厚生労働省

まず、この医療助成制度見直しの根幹になっているのは、「治療方法が見つかっていない重い病気の中で、”特定疾患”に指定されている病気と、そうでない病気では医療助成金の有無で大きな差があり、不公平であるから解消すべき」という問題意識です。また、社会保障費が増え続ける中で、難病への公的費用負担をどう考えるか、という視点もあります。

私がかかっている「潰瘍性大腸炎」は、”特定疾患”に含まれており、医療助成の対象になっています。おかげで安心して治療を受けられています。医療助成制度のありがたみを痛感しているからこそ、対象か否かで待遇が天と地ほども違ってしまう現状は、問題だと思っています。

また、今後の国の財政を考えると、難病患者であっても負担してもらうばかりではなく、家計に余裕がある患者は、ある程度の応分負担をすべきである、ということも理解しています。

病気の人みんなで幸せになろうよ、お金を出したくないわけじゃないんだよ、そのために何ができるか考えようよ、と思っています。

今回出された案は、
(1)特定疾患の対象を広げます
(2)しかし、重症な人だけに医療助成をします
(3)重症者以外の患者さんには、一般の人が3割負担なのに対し、2割負担にしてあげます
(4)2割負担ですが、それだけだと大変なので、月々支払う金額に上限を設けてあげます
(5)上限金額は、高齢者をモデルにして、一般の人より低くしてあげます
(6)現在助成を受けている人たちは急に変わると可哀想なので、3年待ってあげます
という、してあげる感満載のもの。一見、良さそうに見えるけど、この制度になったら、現在助成を受けている患者さんの中で、生活が成り立たなくなる人が多数でるのではないか、と危機感を覚えました。

それぞれの項目について、感じたこと。
(1)これは大賛成。
(2)各疾患で軽症、中等症、重症の認定区分が定められている(少なくとも潰瘍性大腸炎は既にあるけど、他の病気は知りません)が、年1回の検査で決めるので、症状が変動しやすい病気ではどうするのか。また、高額の治療によって重症化を免れている患者はどうすればいいのか(一応、要検討と書かれている)。
(3)ほとんどの人はそうとう負担額が増えるはず。たぶん、治療を続けられなくなる人が続出するでしょう。難病の治療にかかるお金は、本当に高いのです。
(4)一般の人にも、月々支払う医療費に上限(収入に応じて)が設けられています。
高額療養費制度
でも、普通、この上限支出が、毎月毎月一生続くわけじゃないでしょう? 難病患者は、それこそ死ぬまで治療を受け続けなければならないのです。
(5)高齢になるということは、誰にでも起こること。人生設計で備えておくことができます。しかし難病は、若いときに突然発症することがほとんどです。予防したり、備えたりすることはできないのです。それなのに、高齢者と一緒にされても意味がないのです。
(6)3年以内に体調が良くなる保証はひとつもありません。それとも、3年の間に一生分の医療費を貯めておけというのでしょうか。
結局、世帯年収370万円以上の難病患者は、毎月毎月4万4400円、年50万以上必ず支払うことになると言っていいでしょう。病気でフラフラな人に、そんなの払えると思いますか?

難病になるって、突然轢き逃げされて、パッと見ではわからないけど体に治らない傷を負って、犯人が誰だかわからないから保険も下りない、自分もまだ保険に入ってなくてお金はどこからも受け取れないし、見た目は問題ないから障害者手帳ももらえない。その傷は治らないけど医療行為を受け続けないと、痛くて辛くてとても日常生活なんて送れない、傷以外にもいろいろ不調が起こってきて、一生自分はもう健康じゃないって思いながら生きていく、そんな感じじゃないかと思います。たまらないですよね。交通事故に置き換えたら、最悪のパターンではないでしょうか。

しかも、それが人生の前半で起こることが多い。

この人たちに医療を受ける支援をして、なんとか自立した生活を送れるように就労支援もして、気持ちよく税金を払ってもらうほうが、目の前の医療費をケチケチするよりずっと、社会として豊かになると思うのです。難病に限らず、誰がどんなピンチに陥っても、国が、言い換えれば会ったこともないどこかの誰かが、手を差し伸べてくれると安心できる社会のほうが、ずっと暮らしやすいと思うのは、間違っているのでしょうか。

書いているうちに腹が立ってきた。
私は難病患者の中でも高齢で発症したほうだから、いろいろな壁を越えられたけど、将来のある若い人たちにこんな負担を背負わせていいのか。

私は難病になってから世帯収入の変動が激しい時期があったので、家計に余裕があるときとないときでは、体調の安定感が全然違うというのを身を持って感じました。生活が大変だと、体を厭う(いとう:大事にするのほう)余裕がなくなるのです。食事に気を遣う余裕がなくなったり、無理して働いたりしてしまうんです。それで取り返しのつかないほど悪化させてしまうことも少なくないと思うのです。たまたま我が家はいろいろ助けてくれる人がいる環境だったので、生活が大変といっても全然問題にならないレベルだったのですが、それでも仕事をがんばりたいときに体調が悪化して、内心の苦しみは大きかったです。だから、本当に大変な状況の人だったら、金銭的な不安だけでもどんどん体調が悪くなるかもしれないと思います。

どんな状況の人でも、病に苦しまず、将来に希望を持って、自立した生活を送り、尊厳を失わない世の中にしなくちゃだめだと本当に思うんだよ。でも、どうしたらいいのか、わからないんです。



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コメント

  1. えざえざ より:

    こんにちわ、えざえざと申します。
    記事を読ませて頂きました。
    あまりの衝撃に、自分なりに調べてみた結果、以下の情報によりますと、UC患者のうち、軽症者が医療費助成から外れるようで、中等症は大丈夫なようです。重症者だけというのは誤解かもしれません。
    http://www.ibdnetwork.org/pdf/godoshi/ibdnetwork20131011.pdf
    但し、助成の内容が変更になるでしょうから、負担が増えるのは避けられないでしょうね。

  2. きなこママ より:

    えざえざさま、ありがとうございます。
    具体的なQ&Aがあり、勉強になりました!
    そこにもありましたが、軽症者といっても幅がかなりありますよね。治療のおかげで軽症になった人と、最初からあまりひどくなっていない人では、体力的にも全然違うし…そういった微妙なところをどう扱うか、難しいですね。
    でも、特定疾患ではない病気の方からすると、「含まれていれば何でも許されてうらやましい」という声もありますので、その不公平感をなくさなくては受け入れられないでしょうね…

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