誰も悪くはなくても

地元を中心に長い活動実績を持つ犬猫保護団体さんがあります。
先日、そちらのサイトにシニア年齢のコーギーの女の子が来た、という記事が出ていました。
できれば我が家で、と思い、連絡をとってみたときの話です。



そのコギさんは、一般家庭から保護団体さんに相談があってやってきた子でした。
飼い主さんは、一人暮らしの方でしたが、大切に可愛がって育てていたそうです。

ところが、数年前に飼い主さんが突然精神的な病気にかかってしまいました。それでも最初のうちはちゃんと散歩も行き、がんばって世話をしていたそうです。

しかし、1年ほど前から病状が悪化、家から出ることができなくなってしまいました。
カーテンを開けることも難しくなり、コギさんには食事を与えるのがやっとで、暗い部屋の中に犬と飼い主さんが無言で閉じこもっている状態だったそうです。


このままではどうにもならない、ということで、誰か福祉関係の人が介入したのでしょうか、飼い主さんは本格的な治療を受けることになり、犬は団体さんに委ねることになりました。

別れのとき、飼い主さんはずっと「ごめんね、ごめんね」と泣き続けていたそうです。コギさんの方は、突然変わってしまった飼い主さんを理解できなかったのかもしれません。感情がなくなったようになって、別れ際に飼い主さんの方を見ることもなかった、と団体の方はおっしゃっていました。



こうして団体さんの関係シェルターに預かられたコギさんは、そこで大きなトラブルを起こしてしまいます。不安、恐怖、いろいろなネガティブな感情が止まらなくなっていたようでした。

シェルターで生活できなくなり、ボランティアの預りさんのお宅に身を寄せることとなりました。しばらくのあいだは心が落ち着かず、問題行動が見られたそうです。
しかし、経験値の高い預りさんのおかげで、少しずつ慣れてきた頃。気が緩んだのでしょうか、コギさんはひどく体調を崩してしまいました。
預りさんが病院に連れて行くと、重い病気が見つかったのです。



私が連絡をとったのが、ちょうど病気が見つかって、告知を取り下げようとしていた段階だったようです。

うちはコーギーの性格もわかっているし、シニアを看取ったので介護をする覚悟もある。ドッグトレーナーさんの知り合いも何人もいるので、問題行動の修正もきちんと行うし、医療費を出すことも厭わない、とお話したのですが、団体さんは、このコギさんは譲渡するにはあまりにも状態が悪すぎるので、団体所属、ということにして、たぶんこの先あまり長くない命は団体の皆さんで見ていくことにしたそうです。

連絡の窓口になった方は、「あなたのように、犬への愛情が深くて、前の子を亡くしたばかりの人に、こんなに状態の悪い子を譲渡したら、たぶんあなたのほうの心が壊れてしまうでしょう。それはできない」とおっしゃっていました。



保護犬猫のことを考えるとき、私の頭のなかでは、無責任な飼い方をしたひどい飼い主や、劣悪なブリーダーなど、躊躇なく憎める人間が登場していました。保護団体に寄付をするときはそういった人たちへの怒りが原動力となっていた面も否めません。


でも、このコギさんは。
飼い主さんも悪かったわけではない。ただ、突然病気になってしまっただけです。
私だって難病になったときは、本当に降ってきたように突然の、理不尽な話だと思いました。

今健康な人だって、重い病気になったり、事故にあったりします。たまたまくじで大凶を引いてしまったのと変わりないことです。誰にも責任はありません。

もちろん、万一に備えてペットの世話を頼める環境を作っておけば、それは良かったでしょう。でも、それを完璧に準備していると言い切れる人はどのくらいいるでしょう。


それなのに、このコギさんのたどる運命の苛酷さは、なんということなのでしょうか。どうして、この子がこんなに苦しまなければならないのか。私は今キーボードを打ちながら、涙と鼻水でぐしゃぐしゃです。私にできることは、この先どうか幸せな時間があるように、と祈ることくらいしかないのです。



ペットの小さな命を不幸にするのは、とても簡単です。でも、いったん不幸になってしまった子たちを幸せにするのは、何人もの人が力を尽くしても、とても難しい。だから、今ペットたちと生活している人は、今の幸せが壊れないように、どうかどうか、大切にしてあげてほしいと願うばかりです。

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